どんぴんからりん

昔話、絵本、創作(短編)などを紹介しています。

残酷な金貸しと賢い王女・・モロッコ・ユダヤ

    ユダヤ民話40選/小脇光男・高階美行・三原幸久:訳/六興出版/1980年

 

 シェークスピアの「ベニスの商人」に似て、金を返せなかったら 体の肉一キロを提供する契約を結んだ若者の話。

 いつごろの話かわかりませんが、シェークスピア(1564年~1616年)より、さきに成立したのか興味がわく。

 

 裕福なユダヤ人の商人に生まれた息子が、父親が亡くなったあと、財産を食いつぶす。
 父親と商売をやっていた豪商から金を借りて商売をするが、うまくいかず、その金も一文残らず失ってしまう。

 

 金を返せない場合は、体の肉一キロを豪商にやるという契約。

 金を返すあてがなくなり悩んだ若者は、自らの手でわが身を滅ぼす勇気もなく、死にたいものだけがはいれるという宮殿へ足を踏み入れた。

 若者は三日間、王女の窓の下にすわりこみ泣き続け、これまでの身の上を王女に話す。王女は亡父のことを知っており、男を助けるため弁護士を派遣する約束をした。

 たいそうな美男子であった若者は、王女と互いに愛し合うなかになったが、王はこのことにきづかなかった。(じつに都合よくできているのがお話の世界)

 体から肉を切り取り相手が死んだら、殺人罪に問われる。きちんと裁判してからなら、正当な手続き。

 この裁判のとき、王女が弁護士に身をやつして法廷に乗り込む。

 ベニスの商人では、契約どおり肉はいいが、血を流してはならないとして、無事危機を切り抜ける。
 この話では、王女が扮した弁護士が、肉を切り取ることは、契約上やむを得ないが、きっかり一キロの肉を切り取るように要求する。さらに、肉の重さが一キロに足りないなら、不足分を補い、余計に切りすぎたら、金持ちの肉を切って、若者にかえすよう要求した。

 きっかりと、一キロの肉を切り取ることができないと、豪商は、肉もお金もあきらめて家へ帰る。

 

 ときどきドラマなどでシェークスピアの名言が引用されることがあるが、若い世代にとって、シェークスピアは、どんな存在だろうか?。

 

 

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トリのとりちがえ

   トリのとりちがえ/文・内田麟太郎 絵・高畠那生/文研出版/2026年

 

 「トリ」にひっかけた だじゃれ。ただ、だじゃれ爆発とはいかないようだ。

 

 とびだした「トリ」が、羽を見て、目がとびだした。羽のつもりが なんとしゃもじ。

 「トリだもの、とりかえしが つかなくても いいじゃないか」

 とんでいると、シャクトリムシニに トンボの羽。「とりちがえたからだよ」

 さらにとんでいると、へそを とりかえしたい コウテイペンギン

 うつくしい ゆうやけ。トリたちは うっとり うっとり とんでいった。

 うっとり うっとり うっとり。

 海には、とりい(鳥居)も どんぶら。

 にひきのトリがいうことには

   とりちがって いいんだよ。ほら

   にわに にわ とり うっとり。

 

 素直に 絵を楽しめる。鮮やかな絵に ほっこり。

 

 トリの羽が、ラケットや羽子板、葉っぱ、扇子、うちわ など。 とりがえも さまざま。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

おっとあぶない

   おっとあぶない/マンローリーフ・作 わたなべしげお・訳/学習研究社/1995年

 

 子どもたちのまわりには、「おっとあぶない!」ことだらけ。

 子どもは、先を予測できないし、あぶないだけでなく、おきたときにどうなるかイメージできませんから、「ダメ!ダメ!」と叱っても、効き目はありません。

 それでは、どうする?

 こうしたら、こうなるよ!

 それでも いうことをきかないのは、まぬけ といって、注意喚起。ここまでいわれちゃなあ・・・。

 

 でてくる でてくる まぬけ。それだけ 危険が いっぱい。それでも満足できない作者。「ほかのまぬけを しっていたら 本をつくってごらん」と追い打ちです。

 

 ふろばまぬけ、かいだんまぬけ、ぼんやりまぬけ、ひあそびまぬけ

 ぼうくわえまぬけ、つよがりまぬけ、ぶらさがりまぬけ

 とびはねまぬけ、おぼれまぬけ、かみそりまぬけ、ギッコン・バッタンまぬけ

 やけどまぬけ、じてんしゃまぬけ、ばくはつまぬけ、かおだしまぬけ

 ちらかしまぬけ、よじのぼりまぬけ、じぶんかってまぬけ、ばいきんまぬけ

 

 「くいしんぼうまぬけ」は、なんでも口にいれたら、毒かもしれないよ!

 「ぼんやりまぬけ」は、右左をよくみないで道路にでると、まきこまれて おせんべいに なってしまう!

 「おぼれまぬけ」は、たったひとりで 遠くまで泳いでいったら、でこぼこの みずぶくれ!

 「きかいいじり まぬけ」は、電気ノコギリや鑿で 手足が ばらばらになってからでは もうおそい!

 子どもだけでなく、大人への教訓もさりげない。

 スピード違反の 大人と いっしょに 車に乗る「ドライブまぬけ」は、子どもでなく、大人の責任。

 「ばくはつまぬけ」は、鉄砲や花火を おもちゃにしては いけませんというというのだが、こんなものを 子どもの手の届くところに おいておく 大人の責任。

 

 左に文、右に線画とオーソドックな構成。

 

 ただ「まぬけ」の使い方は要注意。他人との会話の際、何かの拍子に「まぬけ」といったら、人間関係が悪くなりそう。

 子どもでも、バチバチのときに「まぬけ」と口にだしたら、虐待となりかねません。

寝言

    語り聞かせた日本の昔ばなし/人と人とのにんまりする話/小澤昔ばなし大学再話研究会・再話 小澤俊夫・監修/岩波書店/2025年

 

 「ねずみ経」は、お経で泥棒を撃退ですが、寝言で泥棒を撃退する話。

 

 毎晩寝言をいうくせのあるおじいさん。ある日このうちに、行者がきたので、じいさは、寝言がからだにさわるのではないかと、きいてみた。

 すると行者は、「それはよいくせだ。それなら、今から書く文句を毎日朝晩かかさず十ぺんずつ唱えなさい。」といって、紙切れに何か書いてじいさにわたす。 
 じいさは、毎日毎日その文句をとなえていたので、そのうち、寝言でもいうようになった。

 ある夜中、このうちに盗人が忍び込んだ。

 「チョロリ、チョロリ、ゴザッタ」という寝言で、盗人が、これはいかんと足を止めた。

 「ショッキリ、ショッキリ、トマッタ」というと、まだ目をさましているかと、盗人がおどろいてひきかえす。

 「ヒックリ、カヤシテ、ショロ、ショロ」という寝言を聞いた盗人は、じいさが寝静まるまで待とうと、小半時ほど戸口にすわってまっていた。

 しずかになったので、盗人がまた部屋の前までいくと

 「チョロリ、チョロリ、ゴザッタ」、 「ショッキリ、ショッキリ、トマッタ」、 「ヒックリ、カヤシテ、ショロ、ショロ」 の繰り返し。なんどいっても、じいさがおなじことをいうので、とうとう盗人が、なにもとれずに夜が明けてしまった。

 

 

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きみのいすは なかった

   きみのいすは なかった/ダニエル・ギル・文 スーザン・ギャル・絵 かわのたろう・訳/岩崎書店/2026年

 

 作者ダニエル・ギルが、少年の頃実際に体験したことがもとになっています。

 

 ダニエルと親友のアーチーは、よそゆきの服に着替え、スティーブの誕生日に出かけました。大きなビルの七階で、チャイムを押すとでてきたのが、スティーブのママ。

 スティーブのママは、ふたりをみると、しばらくだまったまま。そして、「ダニエル、あなたははいって。でもともだちはだめ。いすがないから」という。

 ダニエルが、まえにきたときは、いすがたくさんあったのを思い出しました。なくても床に座っていいともいいましたが、スティーブのママは、「いすがないの」というだけ。

 ダニエルは、もってきたプレゼントを、スティーブにあげてくれるよういって、ふたりでエレベーターにのりこみました。

 

 でかけた誕生日会に親友のアーチだけが、拒絶されたダニエルは、その後、教師となり、いつも教室に、いすをひとつ多くおいてきたのには、こんなエピソードがありました。

 

 ダニエルが、親友の心境をおもい、ふたりでかえる場面が印象にのこりました。でも、スティーブはどうおもったのか、誕生日会にきていた友だちも、ドアでの会話を聞いているはずですが・・・。

 ひとつのエピソードをたんたんと伝えますが、黒人差別を理解できるのは、いくつぐらいからでしょうか。絵が素敵なだけに、ちょっと ものたりない気がします。

 教室にはヒジャブをかぶった子もいますから、多様性も意識されているようでした。

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

子を産む鍋・・ギリシャのユダヤ人の昔話

  ユダヤ民話40選/小脇光男・高階美行・三原幸久:訳/六興出版/1980年

 

 ジョハが隣の女に鍋を貸してくれるよう頼んだが、隣の女は最初いやだといった。さらにジョハが頼み込んだので、貸してくれることなった。ジョハは、鍋を返すときタシニーコ(お盆に似た台所用具)をいれて返した。

 隣の女が、「鍋を貸してあげたけれど、タシニーコは、わたしのものじゃないよ」というと、ふざけやのジョハは、「昨夜、鍋がタシニーコを生んだのさ」と答えた。

 少しして、ふざけやのジョハが、また鍋を借りると、こんどは隣の女は急いで貸してくれた。かなりの日数がたっても、ジョハは鍋を返していなかった。

 隣の女が、「いつ鍋を返してくれるさ、ジョハ」と尋ねると、「使っているときに鍋は死んじまったよ」と答えた。
 隣の女は、「なんてばかなことを言っているんだね。鍋が死んでしまうって」というと、「じゃ、鍋はタシニーコをうむと言うのかい」と、ジョハは軽蔑していった。

 

 訳の通りですが、最後のやりとりは?

 笑えない笑い話。 

よわむしハリー

  よわむしハリー/バイロン・バートン:作絵 舟崎靖子・訳/ポプラ社/1976年

 

メリハリのはっきりした絵のしたに、みじかい文。

 

ハリーは

 子どもたちがこわい

 犬がこわい

 小鳥がこわい

 車だって サーカスだって こわい

よわむしこねことよばれたハリーが、いやいやながら サーカスにいった。

 

ハリーが風船をつかむと、その風船は ふわり。

パン!! 風船から おっこちると つなわたりのロープに ぶつかって 馬のうえ

馬にはねあげられ おちたさきは ライオンのいる オリ。

ハリーはライオンとにらめっこ

 

サーカスから かえったら なんだか ハリーの ようすがおかしい

 部屋の中で ちゅうがえり

 垣根を わたり

 みんなをよんだ 誕生日パーテイ?では 椅子の上で、逆立ち

よわむしハリーは こわいものなんてない 軽業師になった。

 

ある日をさかいに、かわったハリー。何かのきっかけで、人はかわれる!

自信を持てなかったハリーの表情が、 笑顔にかわる。

 

こんな子どもを持つと心配になる親。親は、吹き出しだけで「ハリー」とよぶだけ。

何も言わず 見守って かわったハリーを見て びっくりする親の顔も はればれ。

 

目の表情一つで、情景が かわる。

風船の目は、おそろしげ

ハリーを見つめるライオンの あららという目つき。 

 

子どもと大人、それぞれ違った視点で読める。