どんぴんからりん

昔話、絵本、創作(短編)などを紹介しています。

学を身につけた少年・・モンゴル

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    エルヒー・メルゲンと七つの太陽/モンゴルのいいつたえ集/塩屋茂樹・訳/春風社2012年

 

 昔話ですが、「モンゴルのいいつたえ集」という副題。

 

 ある日、おじいさんとおばあさんのひとりむすこが、突然姿を消し、帰ってきたのは三年後。むすこは、一年目は文字、二年目は歌や楽器、三年目はチェスのさしかたを学んできたことを両親に話しました。

 しばらくして、領主の一行がやってきたとき、むすこは「このからだを売ります。金貨で皮袋一杯分です。」と答えました。領主は、「こやつめ。おれが金をもっていないこととばかにしているな。こいつに後で仕返ししてやる」と、皮袋一杯分の金貨をかれの両親に手渡し、少年を皮袋に入れ、何か字を書いて少年の髪に結びました。そしてその皮袋を二人の使者に運ばせました。

 領主の家に運ばれる途中、少年がすばらしい歌をうたい、アシの笛でうつくしい音色をかなでると、ふたりの使者は、眠りこんでしまいました。

 少年が、髪に結んであった書き物を見てみると、「彼を牢屋に入れ、わしがいくまでよく見張るように」とあったので、「彼をわしの家に住まわせ、おいしい食事を与え、好きなようにさえ、よく世話をしてあげなさい」と書いて、髪に結びつけました。

 領主につかえる長官は、この手紙を領主の妃に見せ、領主の家に住まわせました。

 少年は、おいしい食事をふるまわれ、すきなように暮らしました。

 あたりをみると、領主の家の西の小高い山には、だれひとりとして登る人がいないようでした。ある日、少年がある者にたずねると、「山の向こう側には、チェスの名人である恐ろしい王の家があり、その王さまは、チェスをして負けた人の首をはねる」といいました。

 少年は、一年間チェスを学んだのはこのためかもしれないと、小高い山に登っていきました。見張りの者が少年をつかまえ、王のもとへ連れて行くと、少年は、チェスをすることになりました。はじめ、少年はチェスを知らないといいますが、「チェスを知っているかどうかは関係ない」と、王はチェスをもってきました。

 勝負がついたときどうするかは、そのときに決めるという王に、少年は、勝負の結果、勝った方が負けた方の首をはねるという条件をだしました。チェスには絶対の自信があった王は、この条件をのみました。

 はじめの勝負は引き分け、もういちど勝負すると少年の勝ちで、少年は、約束通り王さまの首をすぱっと斬りおとしました。

 この王さまは、くる日もくる日もだれかとチェスをしては相手の首をはねていたので、近くに住むものは、みんな少年に感謝しました。

 はじめにあった領主も、じつは王さまから逃げていたのですが、少年を罰するどころか、少年に馬や家畜、お金などたくさんのほうびを与えました。それから少年は家に帰り、両親に再会し、しあわせにくらしました。