どんぴんからりん

昔話、絵本、創作(短編)などを紹介しています。

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          雲/あまんきみこセレクション2 夏のおはなし/三省堂/2009年


 8月は終戦前後のことがテレビドラマや記録映像で取り上げられ、あらためて戦争を考える機会が多い。

 「玉音放送」をめぐって、反対する陸軍との切迫した状況がNHKで放送されていたが、この当時の陸軍(一部だろうが)が、まだ戦争を継続しようとしていたことに驚かされる。
 全体的な情報を共有していたら戦争継続というのは考えられる状況ではなかったはずであるが。

 ところで、「雲」は、満州開拓村で仲良くなったユキと中国人のアイレンが火のなかでいのちを失うという悲しいものがたりであるが、当時の情勢がわかっていないとわかりにくいかもしれない。
 「雲」という題は、怒りやいたみを象徴しているようだ。 

 当時の開拓村の人々は銃や刀をもち、何かあると非常訓練のとおりきめられた配置につき、襲撃にそなえていた。村が襲われ銃撃戦に。
 切迫した状況のもとに第三中隊がやってきて、「集団部落」の人間を囲い込み、まわりに石油をまいて、火をつけ銃をうつ。

 誰が武装組織の人間であるかわからないなかで、当時の軍人は無差別な殺傷をすることにあまり抵抗がなかったようだ。

 火のなかにいたアイレンにむかって、ユキが叫びます。
 「アイレン、にげてえ。」
 「とんで、とんで! みんな、とんで!」

 二人の墓は、いつもふたりが遊んでいた丘の上にたてられます。
 墓の前の人びとの頭の上をひとむれのカササギがゆるやかにとんでいきます。

 このカササギは、夕焼けで朱色にそまった空を、むれをなしてとんでいくのを見つめるユキとアイレンの冒頭部と重なっています。

(ウイキペデア抜粋)
 満蒙開拓移民団の入植地の確保にあたっては、まず「匪情悪化」を理由に既存の地元農民が開墾している農村や土地を「無人地帯」に指定し、地元農民を新たに設定した「集団部落」へ強制移住させるとともに、満州拓殖公社がこれらの無人地帯を安価で強制的に買い上げ日本人開拓移民を入植させる政策が行われた。
 当時の「満州国」国土総面積の14.3%にあたる2000万ヘクタールが当時の時価より相当安く買収されたようだ。低価格で強権的な土地買収は、満州各地で恒常的に行われた。そのうえ土地買収代金はなかなか支払われなかった。このように開拓民が入植した土地の6割は、地元中国人や朝鮮人が耕作していた土地を強制的に買収したものであり、開拓地とは名ばかりのものであった。そのため日本人開拓団は土地侵略の先兵とみなされ、初期には反満抗日ゲリラの襲撃にあった。満州国の治安が確保されると襲撃は沈静化したが、土地の強制買収への反感は根強く残った。
 現地の農民の殆どはもともと小作人であったため開拓団員の農地で小作をする者が多かったが、地主などの地元農民は自らの耕作地を取り上げられる強制移住に抵抗したため、関東軍が出動することもあった。 「集団部落」は反日武装組織との接触を断つ為に、地元住民を囲い込む形で建設された。