
てんぐのくれためんこ/安房直子コレクション3 ものいう動物たちのすみか/偕成社/2004年 1983年初出
電車にのっていると子どもたちが夢中になっているのが、ゲームか携帯。
めんこする子どもたちの姿はほとんどみることができないようだ。
ベーゴマもしかり。
たけしくんが、買ったばかりの十枚のめんこをみんなとられて、ひとりとぼとぼとかえるところからはじまります。
おしいことをしたなと思っていると、人の心がちゃーんとわかるてんぐがあらわれて、風のめんこをたけしにくれます。裏も表も真っ赤なめんこ。
こどもたちのところで、もういっぺん勝負しようとしたとき、林のおくから、めんこを打つ音が聞こえてきます。
がやがやさわいでいるのは子ぎつねたちでした。
子ぎつねたちと勝負して二十枚以上めんこをとることになるのですが・・・。
このあと、親ぎつねがでてきて、子ぎつねのめんこに、ロウソクのロウをぬったり、練習させたりして、勝負はつづきます。
てんぐのくれためんこは、最後には木の葉にかわってしまいます。こんなものではなく、自分の力で遊びなさいという思いがこめられています。
子ぎつねのもっているめんこ。
赤い電車が走っていく絵は、電車の音も、すすきのさやぐ音まできこえてきます。
赤い彼岸花を頭にかざったきつねのお嫁さんが石にこしかけています。
薬味にネギとトウガラシがついている、できたてのてんぷらうどん。
子ぎつねのもっているめんこは、親ぎつねがてづくりしたものですが
「あれはみんな、わたしたちがつくってやっためんこです。一枚一枚絵をかいて、一枚一枚色をぬって、切りぬいためんこです。ひとたば十円で売っている印刷のめんこなんかとは、わけがちがうんです。」というセリフは耳が痛い。
てんぐは負け続きのたけしくんを勝たせてくれるのですが、別の場面でも子どもの応援をしてくれる存在になってほしいものです。
偕成社から2008年に絵本も発行されています。(早川純子・絵 偕成社)
