大人と子どものための世界のむかし話13/タンザニアのむかし話/宮本正興:編訳/偕成社/1991年
ある村で、ライオンが小さな動物たちを一ぴきづつ食べていました。
村の動物の数がめだってへってきて、ライオンのせいというのがみんなにわかりました。
そこで動物たちは集会をひらき、いろいろ議論したあげく、ひとつの結論をまとめました。
まず野原に出かけハイエナをつかまえると、ライオンに火で焼いた肉料理のほうがおいしいともちかけます。
さらに「焼き肉を賞味するため、ライオンが深い穴を掘ってその中に入り、頭だけが地面からそとにでているようにしたら、あなたさまの口に焼き肉をいれてさしあげます。このようにして焼き肉を食べると、したたるあぶらをこぼして無駄にすることがありません」とウサギがいいます。
ウサギは、それから大きな石をさがしてきて、かまどのなかにおき、あつくなってくると、その石にすこしばかり水をかけます。ジューン、ピューと激しい音をたてて水がたちまちかわくと、またその石に水をかけます。つまり肉を焼く演出をしたのです。
一方、焼き肉の小さな塊をライオンの口に入れてあげると、ライオンは大喜び。もっと大きいのをくれというと、動物たちは、すっかりあつくなっている大きな石をライオンの口にほうりこんでしまいます。ライオンの口の中は大やけど。深い穴からでることもできず死んでしまいます。
ウサギは、ここでもトリックスターのようです
