新潟のむかし話/新潟県小学校図書館協議会編/日本標準/1976年
内郷村上山田にいた源兵衛という男。家の人や村の人がいそがしげに仕事をしているときでも酒を飲んで遊び歩き、おとっつあんやおっかさんが、米や野菜を売ったお金までもちだしては、丁半につかう始末。
村の者は、人並みのことをしない源兵衛のことを鬼源兵衛とよんで、悪口をいっていた。
村の近くにお地蔵さまがあって、村の者は、願い事をかなえてもらうために、よくお参りにでかけていたが、まじめで、正直もののおっかさんも、源兵衛が一日でもはやく、まじめな男になってくれることをいのっていた。
ある日、また源兵衛が遊びにいくために、こっそり家を出てお地蔵さんのところにいくと、おっかさんがでてきて帰るようにいうと、源兵衛は、こしにさしていた刀を抜いて、おっかさんを切り倒し、それでもおっかさんを、そのままにして遊びにいってしまいます。
翌日、源兵衛が何くわない顔をして、うちに帰ってくると、きりすてはずのおっかさんが、一生懸命働いていて、「これ、せがれや。夜露はからだに毒だから、気いきつけれや」と、いつものようにやさしくむかえてくれました。
源兵衛は、しばらくの間、ぼんやりして、言葉も出ませんでした。気をとりもどした源兵衛が地蔵のところにいくと、そこにはお地蔵さまがころがっています。お地蔵さまを見た源兵衛は、じぶんのおこないがわるかったことに、はじめてめざめ、それからは、まじめな人間になって、仕事もいっしょうけんめいにするようになった。
それから、村の者も鬼源兵衛といわなくなり、この地蔵さまは「身代わり地蔵」といわれ、うやまわれているという。
昔も今も、親が子を思う気持ちはかわりません。一方、ギャンブルは、人をダメにするとわかりながら、なかなか やめられないという現実もありあす。
