出版時8万8千人というサラール族のむかし話。敬虔なイスラム教徒といいます。
若い猟師のソリマンは、人生の伴侶をさがそうとしていました。ある日、蛇に狙われていたヒバリをもっていた宝弓で矢をうち助けます。
ソリマンが出発しようとしたとき、突然、湖の水面にひとりのきれいな娘が映りました。「かわいい娘よ、あなたはおそらく竜王宮の仙女でしょう。もし僕がすきなら、どうぞ、岸まで来てください」と、愚かにもこのように言っていると、後ろで笑い声がしました。ソリマンがびっくりしてうしろをふりむくと、そこには水面に映った娘でした。娘はワリヤといいましたが、ヒバリをすくった心の優しさにひかれ、弓の腕前にもよかったので、彼がすきになってしまったのです。
意気投合して、ワリヤの家にいくと、父親の猟師が、銀狐をしとめ結納品として差し出したら、自分の娘婿にみとめようといいます。
銀狐は、助けたヒバリに案内されて仕留めることができますが、ワリヤの父は、銀狐の皮に三粒の宝石の猫目石をつけたらもっと素晴らしくなるに違いないといい、ソリマンは、猫目石を探しに出かけます。
三つの課題というのが昔話のパターンですが、この話では二つです。この猫目石を見つけるのに大変な苦行が待っていました。
ここでもヒバリの案内で、苦労して岩山の山頂につきますが、そこにあった赤い石が、突然動き出し、大きな悪魔に変わりました。ソリマンは、矢を悪魔の左目に命中させますが、悪魔はソリマンに襲い掛かります。ソリマンは、刀で悪魔の首を切り落としますが、自分の顔の半分と片方の耳を引き裂かれてしまいます。
悪魔が倒れると、石の崖にふたつの石門が開き、中には三粒の猫目石がありました。
ワリヤの家に向かう途中、自分の顔がつぶされて、醜くなっていることに気がついたソリマンは、この顔でどうしてワリヤに会いに行けるだろうと、悲しくなり悩みました。そしてついに思い切って、猫目石を湖に投げ込んでしまいます。
ソリマンが故郷に向かって歩きはじめたとき、後ろで馬のひづめの響く音が、耳に入りました。馬にはワリヤがのっていて、ヒバリから事の子細をきいて、ソリマンを追いかけてきたのでした。
ワリヤは言います。「私が愛していたのはあなたの外見ではありません。あなたの善良な心と、勇敢な揺るがない意志なのです。このふたつの人徳は、猫目石よりずっと貴重です。」
父親も、このふたりを祝福してくれたようです。何しろ、二人は相愛の夫婦となり、幸せに暮らしたといいますから。
イスラム教徒は、中国社会に適応できているか心配になります。
