人になりそこねたロバ/インドの民話/タゴール暎子・編訳/ちくま少年図書館67/1982年
よめさんが年老いた姑にききました。「お義母さん、あんたはいつガンジス河」へいくんです?」。
インドのヒンドゥー教徒は、ガンジス河のほとりで葬られ、遺灰を河へ流すのが習慣ですから、ようはいつ死ぬかということ。姑は「そうだねえ、息子とあんたがなかよく暮らすのを、もっと見とどけてからにしようかね」と、答えました。しばらくして、よめさんがまた姑におなじ質問をしました。すると姑は、「そうだねえ、孫の顔を見るまでは、当分いけそうもないね」と、いいました。
そのうち、よめにも息子ができました。
「いやいや、孫がよめをもらうまでは、わたしも生きながらえないとねえ・・」
やがて孫もかわいらしい新妻をめとりました。あたらしく姑になったよめが、「お義母さん、ほんとうにいつガンジス河にいくんです?」ときくと、「そうだねえ、わたしも知らん間に、ずいぶん年をとってしまった。そろそろガンジス河に行くとしようかね。けどね、わたし一人ではこわいから、おまえさんもいっしょに来とくれよ」姑はよめに手をさしのべました。それ以来、よめは二度とおなじ質問を口にしなくなりました。
このよめさん、自分が姑の立場になって、息子のよめから、おなじ質問をされたのでしょう。
