どんぴんからりん

昔話、絵本、創作(短編)などを紹介しています。

きっちょむ話・・宮崎

PVアクセスランキング にほんブログ村

      宮崎のむかし話/宮崎民話研究会編/日本標準/1975年

 

・天のぼり

 ある日、きっちょむさんは、畑の麦踏を頼まれたが、いやでいやでたまらんかった。そこで何を考えたか、きっちょむさんは、青竹を五、六本担いできて、畑の真ん中へ立てると、「いまから天へのぼばい」と、みんなにいった。

 みんなは、あぶないと大声で叫んだが、きっちょむさんは、そんなことにおかまいなく、一本の竹をのぼりおわると、べつの一本をつぎたしながら、どんどんのぼっていった。

 村のみんなは、空を見上げ、もうおりてこいと口々に言いながら、畑を歩きまわった。しばらくして、きっちょむさんが、畑におりてみると、畑の麦は、しっかりふみつけられていた。おかげで、きちょむさんは、麦踏をせずにすんだと。

・棺桶の見舞い

 村の庄屋どんが、病気になって、村の人たちは、みーんなお見舞いに行ったが、きっちょうさんだけは、ひとりで畑仕事をしていた。みんなから見舞いに行くようにいわれても、知らん顔。

 ところが、夜になって、ひとりで庄屋どんのところにいくと、「庄屋さま、町へ医者を呼びに行ったが、休みだった。」といった。庄屋どんは感心して、きっちょむさんに酒を飲ませてくれた。

 つぎの晩も、酒を飲ませてもらおうとおもったきっちょむさんは、また夜遅くひとりで、でかけていった。庄屋どんが、「今夜は、医者をつれてきたか」ときいたところ、きっちょむさんは、「いいや、今夜は、寺にいってきました。それから、庄屋さんは、どうせ助からんだろうと思うて、棺桶を担いできました。」といったから、庄屋どんは、かんかんにおこって、きっちょむさんを家の外へおいだしたと。

・あついうちなら

 村の人がきっちょむさんをだましてやろうと、小鯛を買うから、見せてくれといった。きっちょむさんは、坂道を、よっこら、へっこら のぼって魚を、村の人に見せた。
 村の人は、魚を見て、「この魚はもうだいぶよわっている。お気の毒じゃが、もういらんばい」という。きっちょむさんは、せっかく、坂道をのぼって、山の上まで持ってきたのに、けちをつけられたので、わざと平気な顔をして、小鯛の魚を、かごごとひっくり返した。これをみた村の人は、もったいないと、あわてて、魚をひろい、焼いて、べんとうのおかずにした。

 すると、きっちょむさんが、まじめな顔をして、「耳よりな話がある。ちかごろ、うさぎのフンがひどい値上がりして、いいしごとになる」と、村の人へ、もちかけた。
 村の人たちは、うそじゃないなときっちょむさんにねんをおすと、うさぎのフンを買ってくれときっちょむさんにたのんだ。集めてくれれば銭になると、うけおったきっちょむさん。それから、村の人たちは、毎日山へいっては、うさぎのフン集め。馬車一台分をあつめ、きっちょむさんのところへ出かけた。きっちょむさんは、ちょうど朝飯時で、みんなを待たせてから、うさぎのフンが入ったかますに手をつっこむと、「おや、おや、こりゃ、えらい冷えちょるが、うさぎのフンも、あついうちなら、値がつくが、こんげ冷えとると、売り物にならない。」といった。
 村の人たちは、がっくり。また持ってかえれないと、せっかくあつめたうさぎのフンを、きっちょむさんの家の前で、馬車ごとひっくりかえして、かえった。

 「こやしに、冷えたもあついもあるもんかい。いいこやしがあつまった」と、きっちょむさんはよろこんだと。