どんぴんからりん

昔話、絵本、創作(短編)などを紹介しています。

おじいちゃんの口笛

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   おじいちゃんの口笛/ウルフ・スタルク・作 アンナ・ヘグルンド・絵 菱木晃子・訳/ほるぷ出版/1995年


 ウルフのおじいちゃんの話を聞いて、自分もおじいちゃんがほしくなったベッラ。
 ウルフが、「おじいちゃんを手に入れるところなら、しってる」というので、ベッラは、髪の毛をとかし、白いシャツをきて、グスタフソンの庭のキンセンカをもって、むかったのは、黒い車がならんでいる老人ホーム。

 ベッラは、「あなたに会いにきました。花を持ってきました」と、ニルスさんにあいさつしました。とつぜん、おじいちゃんといわれてもおぼえがなかったニルスさんでしたが、ひとりぼっちだなあと考えていたニルスさんは、すぐにベッラをだきしめました。食堂でコーヒーをすすり、シナモンパンをたべていると、ニルスさんは、とつぜんベッラを抱き上げ、テーブルの上に立たせ、孫のベッラだと、みんなに紹介しました。

 帰り際、ベッツが、とおまわりにおこづかいの話をすると、ニルスさんは5クローネをベッラにくれました。

 とつぜん、孫だといわれたニルスさん、信じていたのか(痴呆かな? いやそれとも・・)。妻も亡くし、ひとりぼっちだったニルスさんは、心臓もわるくて、たぶん自分に残されて時間はすくないのを自覚していました。老人ホームの前には黒い車(霊柩車?)がいつもならび、ニルスさんの部屋には、奥さんの写真と金の時計、馬のはく製、じぶんでほったヘラジカの木彫りだけ。
 人生の最後をむかえる準備ができていましたから、ベッツが孫だと名乗ったときに、天からのさずかりものだっとおもったにちがいありません。

 つぎの日、雨なのに老人ホームへでかけたふたり。「夢でもみたわるく、のかと思ったよ」というニルスンさんの足をつねったベッラ。トランプのあと、ベッラは、ウルフのおじいさんは「湖へ魚釣りをつれていってくれたんだけどな」といいましたが、ニルスさんは、「遠くまで歩けない」といったあと、別れ際、「魚釣りいけなくて、残念だった。なにかほかのことをかんがえておくよ」と約束しました。

 

  それから何週間もしてから、ニルスさんと外に出ることになったふたり。ほんとうに久しぶりの外でだったようで、ヌルスさんはお日さまに目をほそめ、鳥の声に耳をたてました。ニルスさんは、なくなったおくさんがもっていたもので、凧をつくり、しっぽにネクタイをゆわえつけましたが、風がふいていなかったので、凧はあがりませんでした。この時、ニルスさんは、口笛で「ヨハンナ、口笛がふけるかい?」という口笛をふきました。おくさんの名前は、ヨハンナでした。
 「おれも口笛が吹けるようになりたいな」ベッラはつぶやきました。

 

 つぎに老人ホームを訪ねたとき、ニルスさんはベッドでねていました。ベッツはニルスさんの子どものころ、楽しいと思ったことを聞きました。さらに誕生日をきくと、ニルスさんは誕生日をわすれていましたが、「もしかして、こんどの金曜日じゃない?」というと、「ああ、たぶんな」という答え。

 それからは、ニルスさんの誕生日のお祝いの準備で、三軒の家の芝刈り、グスタフさんのバラの花壇の草をとりなどで、おかねを貯めるとプレゼントの品物をかいました。

 やがてニルスさんの誕生日の歌をうたい、ひげそりしたあと、懐中電灯をもって、ニルスさんが大好きだったサクランボとりをはじめました。そのサクランボの木は、グスタフソンのもの。おりるだんになって、ニルスさんは、地面にたおれてしまいました。

 グスタフソンにおいはらわれてから、礼拝堂のとなりの原っぱで、パーティがはじまりました。それから葉巻と絹のネクタイのプレゼントです。

 ニルス「おまえみたいな孫がほんとうにいたらなあ」

 ベッツ「おれにも、おじいちゃんみたいなおじいちゃんがほんとうにいたらなあ」

 

 「こんどあうとき、おまえの口笛がききたいな」と言われたベッツですが、まえから練習していたのですがうまくいっていませんでした。

 

 ベッツが口笛をふいたのは、礼拝堂での、お別れの日でした。だいぶたって、口笛がふけるようになって、ニルスさんのところへいくと、老人ホームのニルスさんの部屋は、かたずけられていたのです。

 

 しずまりかえった礼拝堂でながれた口笛は、「ヨハンナ、口笛をふけるか?」でした。
 口笛をふき、ニルスさんのつくってくれた凧をあげるラストは、天国のニルスさんと会話しているようで、まさに映画のような場面。2022年劇団の公演で上演されていました。

 

 でてくるキンセンカ、バラ、サクランボの木は、グスタフソンさんの庭のもの。悪ガキに気がついているはずですが、もっていく(ぬすみ!)のを許容する心の広い人。目立たないのですが、渋い人でした。

 

 『絵本』のジャンルに位置づけられていましたが、絵ではなく、長めの文章の行間をを味わって、読みたい作品です。

 このところウルフ・スタルクにはまってしまいました。同じ作家の作品を集中的に読んだのは安房直子さん以来でしょうか。この作品も1995年の出版(原著は1992年)で、図書館の開架にはなくて、借りだしてきたもの。新刊書がでてくると、どれかは閉架行きになるのは理解できるのですが、開架にないと、本そのものを紹介されている本を読んで探すなどしなければなりません。まあ、意識的に読むということでしょうか。情報をどこから得るかも重要になるということでしょう。