
エマおばあちゃん/ウェンディ・ケッセルマン・文 バーバラ・クーニー・絵 もきかずこ・訳/徳間書店/1998年
エマおばあちゃんは、1人暮らし。
72歳の誕生日に、子どもや孫がやってきましたが、いつだってゆっくりするひまもなくかえってしまいます。だから、たいていエマおばあちゃんは ひとりぼっち。さびしいなと おもうこともありました。
エマおばあちゃんの話し相手は、<かぼちゃのたね>という しましまねこだけ。
エマおばあちゃんが好きなのは、戸口にふきよせられた雪を見たり、遠い故郷の小さな村をみたりすること。
エマおばあちゃんは、子どもたちからおくられた、小さな村の絵をみて、こころのなかで、「あたしがおぼえてる、村とはまるでちがうわ」とおもっていました。毎日眺めているうちに、エマおばあちゃんは決心しました。まどべにすわって、覚えているとおりの、故郷の村の家をかきはじめたのです。
みんながくると、もらった絵をかけ、いってしまうと自分がかいた絵をかけました。ところが、ある日、うっかり絵をとりかえるのを わすれて、みんなの目にとまってしまいました。絵を戸棚にしまおうとすると、みんなは、「いい絵だわ! もっとかえばいいのに」とさけびました。すると、おばあちゃんは、戸棚から20枚以上の絵をとりだしました。
その日からも、毎日絵をかきつづけたおばあちゃんのところへ、絵を見に来るお客さんがやってくるように、なりました。
お客さんがかえってしまうと、おばあちゃんは、またひとりぼっち。
けれども描き続けた絵が、壁という壁、おしいれにも、台所の棚の中も、うめつくしてしまいました。
なつかしい友だちや、だいすきな景色にかこまれているうち、おばあちゃんは、もう寂しいとは、思いませんでした。
もう年だとおもうか、まだ時間があるからと、好きなことをはじめるのは、紙一重。何かをするのに、おそいということはありません。
おばあちゃんというと、老いや死など重いテーマになりがちですが、さわやかな読後感でした。
72歳は、まだ後期高齢者にもなっていない年齢、微妙な設定です。
また、エマおばあちゃんが描いた絵が、ずらりならんでいるのは壮観です。
大人だと、夫はどんな人だったか、故郷はどんなところだったか、子育てなど、どんな人生をおくってきたのかも気になります。
