
ペニーさん/マリー・ホール・エッツ・作絵 松岡享子・訳/徳間書店/1997年
版画でしょうか、カラーはカバーだけで絵は黒白。原著は1935年で、それから60年以上たってからの翻訳。細かい字が一ページびっしり。それが30ページ余り続くので、読み聞かせは、一度だけでは無理そうですが、楽しみも大きい。
ペニーさんは、大家族。といってもペニーさんのほかは動物です。
としとったウマのリンビー、メウシのムール、メスヤギスのプロップ、ブタのバグワップ、子ヒツジのミムキン、よくふとったメンドリのチャックラック、オンドリのドゥーディ。
ペニーさんは、年をとっても、ずーっと工場で働いていましたが、これだけの家族がいると食べものだけで給料はなくなってしまいました。
ある日、動物たちがおとなりさんの畑を荒らしたことから、おとなりさんがやってきて、やっかいな連中をおはらい箱にしないならと、とんでもない要求。
ひとつ。つぎの新月までに南の畑三枚を耕すこと。
ひとつ。納屋の向こう側にある牧草地から、石ころと雑草をとってきれいにすること。
ひとつ。夏中、毎日牛乳をとどけること。
「けものたちをわたすか、それとも仕事をするか」と二者択一をつきつけられたペニーさん。工場を休めば給料はもらえない、やつにわたせば肉屋いき、親切な人がやしなってくれたら連中をゆずるんだが、といくら考えてもいい案が浮かばない。
この状況に、これまでなにひとつせず、楽をしてきた動物たちが立ち上がりました。
ウマのリンビーは、畑を耕す(なんと仮病!)
メウシのムールは、食べ物をよく噛んで、ミルクをだす(ミルクなんてだしていなかった!)
メスヤギは、石ころをとる
子ヒツジは草とり
メンドリは、まずいえさ!をたくさん食べて、大きなたまごを うむ
オンドリは、ほりかえした土のなかからミミズをとる
動物たちは、夜、作業開始(一面真っ黒な絵には、”動物たちが畑ではたらいているところ”の説明が・・・)
おかげで、おとなりさんの要求は すべて終了です。ミミズは売り物でした。
動物たちのセリフがいい。
「働くの好き!」
「おれたちってばかだったよな。これまで、なにひとつしてこなかったんだからな。こうやって働いてみると、怠けているより、働いている方がいいってわかったよ」
働くことに目覚めた動物たちは、ペニーさんの石ころが多くて未利用地だった土地の石ころをとりのぞき、耕しました。ペ二ーさんは、そこに、パンジーやヒマワリ、バラ、ヒヤシンスなどを植えました。
ペニーさんの畑は、町の中でも、いちばん美しい畑になり、そして新しい家も建てました。
自分たちがまいた種を、じぶんたちで刈り取る動物たち。それならもっとはやくきづけよ!といいたいところながら・・。
ペニーさん、動物たちへよせる愛情がはんぱでありません。動物たちと感謝の記念写真をとっていました。それもはじめのページと終わりのページの絵がおなじ。
自分の知らないところで、あれよあれよと、おとなりさんの要求が解決されるのを、なぜと自問自答するところに、素朴な人柄がにじみでています。表紙の顔からはちょっとイメージしにくいのですが。
