オー・ヘンリーショートストリーセエレクション マディソン街の千一夜/千葉茂樹・訳 和田誠・絵/理論社/2007年
おはなし会で、オー・ヘンリーの短編が話されていたのに刺激されて、さっそく読んでみました。
ショートといっても大分長いのですが・・・。
「それぞれの流儀」も楽しい。
ホームレス同然の暮らしをしている元警部と伯父から家を追い出された大富豪の息子。
その日に食べるものにも事欠く生活。
元警部「一皿のビーフィシチューのために人殺しだってやるし、浮浪者からウエハースだって盗む。一杯のチャウダーのために宗教を変えたっていい」
若い男「ぼくだってウイスキー一杯のためにユダ役を演じてもいい」
この元警部のところに耳よりの話をもってきた同僚。警察内部の権力争いに偽証してくれたら金をくれるという。食べるものにも事欠いている元警部だが、友だちを裏切ることはできないと、きっぱり断ります。
大富豪の息子にも耳寄りの話がもちこまれます。しかしこの男も伯父からすすめられている婚約話が継続しているときくと、大邸宅に帰ることを断ります。よほど嫌な相手だったようです。
そして二人ともパンの無料配布の長い列に並びます。
どん底の生活のなかで、どんなことでもやるというほど追い詰められていたのですが、人としての矜持を失わない二人の男に、おもわず拍手です。