大人と子どものための世界のむかし話6 ペルー・ボリビアのむかし話/インカにつたわる話/加藤隆浩・編訳/偕成社/1989年初版
キツネがコンドルに頼んで連れていってもらったのは天の世界。
そこでは、おおぜいのこびとたちが、お祭りの用意をしている最中。
コンドルとキツネが料理をごちそうになり、コンドルはかえりますが、キツネはもう少し、料理を楽しんでからとといって、かえろうとしませんでした。
気がつくと、こびとたちは、いつのまにかきえ、キツネはたべものもねむるところもなくとりのこされました。キツネが困って星に頼むと、星はキツネをとめてやることにしました。
ある日、星は出かけることになり、キツネに、カニワをひとつぶわたして、夕食をつくるため、ゆでるよういいのこし、でかけていきました。
キツネは、ひとつぶといわれ納得できず、お皿の上にあったカニワのつぶを十つぶほど、ゆでました。カニワをゆでていくと、カニワは鍋いっぱいにふくらんで、ふきこぼれ、どんどんながれだし、家じゅうにあふれてしまいました。あわてたキツネは、なめてなめて食べつくそうとしましたが、なめてもなめても、どんどんながれだしました。
星がかえってくると、「この、大ぐらいのキツネめ、どうして、わたしのカニワをむだにしたんだ」と、たいそう、はらをたてました。
悲しくなったキツネは、地上にかえろうと、藁で縄を作り、星にたのんで、地上へとおりていきました。キツネは、あともう少しで地面につくというところで、縄がたりなくなりました。キツネが、山の上にいるオウムが目にはいり、いまいるところを忘れてオウムをからかうと、オウムは、かっとなって縄を、プツリとかみきってしまいました。キツネはくるくるまわりながら、地上にたたきつけられ、はらがはれつしてしまいました。はれつしたキツネのおなかの中から、かぞえきれないほど、たくさんのキツネがとびだしました。こうしてキツネは、地上にひろがりました。
自分勝手なキツネをいましめる話かと思ったら、由来話のオチでした。
*カニワは、荒れた土地にそだつ穀物で、ふつうはニワトリのえさになるもの。
ところで、あふれだしたカニワがどうなったが気になるところですが、なにもふれられていません。 グリムの「おいしいおかゆ」では、村中にあふれだしたおかゆが、一言でおわるので、お話を聞きなれたこどもは、気になるところでしょう。