おおかみのおしょくじ/角野栄子のちいさなどうわたち2/作:角野 栄子 絵:長崎 訓子/ポプラ社/2007年
「おかしなうそつきやさん」には、「大きくなりたい おおかみ」「おおかみの おしょくじ」「おおかみのおよめさんに なるのは だれ?」「おおかみのかぜを なおすには・・・」の四話があります。
うそつきやさんへの注文も「せかいではじめてのうそ」「どきっとする すごい うそ」「いいきみの いー っ、っていう うそ」「ほんとの うそ」といろいろ。
アンデルセン賞受賞後にラジオ番組に出演されて、うそつきやさんの冒頭部「うそつきやのおばあさんは、ポケットを、じゅんばんにあけたり、しめたり、においをかいだりして「ちょうどいいのが ありましたよ」と話しはじめます。」と朗読されましたが、その心地よさにひかれました。
「おおかみの おしょくじ」は、おおかみに食べられますが、まずは「おおかみって、おばあさんを みると、どうして たべちゃうぞとしか いえないの」とうんざり。
ねむれないというおおかみに「おきのどくさま どうぞ わたしを めしあがれ」と、食事の作法まで伝授です。
「テーブルクロスをかけて、ナプキンをそえて、たべものは ちゃんと おさらにのせるのよ」
「おしょくじまえの おいのりを わすれちゃ だめよ」と、いたれりつくせり。
ところが、おおかみがパカッと口をあけて、おばあさんをくわえると、うんのわるいときは はうんがわるく、おおきな しゃっくり ひっくり。おばあさんはのどをするりと とおりぬけ、あっというまに一直線におなかのなかへ。おおかみもたべたんだか、たべなかったんだか、わからないくらい。
おばあさんは、おおかみのおなかのなかでクークーおやすみ。
おわりかたも、「わたしのうそは これでおしまいの まいまい」と軽快です。
うそを注文した男の子の疑問。
「おばあさん、どうやって おおかみのおなかから でてきたの?」
おばあさんのこたえは?
「赤ずきん」「おおかみと七ひきの子ヤギ」では、おおかみが、おなかを切られてしまいますが、一味ちがいます。
うそのお値段も、握手が三回と洒落ています。
「うそはついていない」と強調すればするほど、うそっぽい人もいれば、うそといってもほんとうのように聞こえる人もいます。おばあさんは後者でしょう。ほっこりする話でした。
