ロシアの昔話/内田莉莎子:編・訳/福音館書店/2002年
嘘をつくことはいけない? それでも嘘つくことにも言い分はありそう。
おじいさん、おばあさん、むすめの三人暮らし。
むすめがやぎのむれをつれて、草を食べさせに行きました。
かえってきたやぎに、おじいさんがたずねました。
”おなかいっぱいたべたかい 水をたっぷり のんだかい”
やぎたちは、食べて、飲んで、木陰で昼寝もしましたと、答えますが、いっぴきのやぎだけは ”おなかぺこぺこ のどもからから 昼寝なんぞ とんでもない”と、答えました。おこったおじいさんは、腹をたてて、娘を追い出してしまいました。
次の日、おばあさんが、やぎをつれていきましたが、一匹のやぎだけは”おなかぺこぺこ のどもからから 昼寝なんぞ とんでもない”と答えると、おじいさんは、おばあさんも家から追い出してしまいます。
三日目はおじいさんが、やぎをつれていきますが、あのやぎだけはあいかわらず、同じ答え。怒ったおじいさんは、よこっぱらがやぶけるほどぶちのめして、縄でしばると、包丁をとぎにいきました。
これはたいへんと、やぎは縄をちぎってにげだし、うさぎの小屋に逃げ込みました。そしてかえってきたうさぎを脅かします。
”わたしゃ おてんばやぎ
買われた値段は たったの 三えん
よこっぱら なぐられて おんだされた
どんどこ おまえを ふみつぶすよ
つので ずぶっと つき殺すよ
しっぽの ほうきで はきだすよ”
ないていたうさぎをみたおんどりが、逆に やぎをおどかしてしまいます。
むすめさん、おばあさん、おじいさんはいつのまにかフェードアウト。同情するひまもありません。昔話って不思議です。