どんぴんからりん

昔話、絵本、創作(短編)などを紹介しています。

人生は回転木馬

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    人生は回転木馬/オー・ヘンリー ショトストーリーセレクション 千葉茂樹・訳/理論社/2007年


 離婚したいと治安判事のところにやってきた山男のランシーと女房のアリエラ。

 治安判事ウイダップの前で、お互いの悪口をいいあう二人。

 治安判事は離婚証明を発行すると裁定します。ランシーは、熊の毛皮一頭分とキツネの毛皮二頭分売ってこしらえた五ドル紙幣がありがねのすべてといいます。

 治安判事は手続手数料は五ドルと言いながら、何食わぬ顔で紙幣をポケットにねじこみます。

 判事が離婚書類をわたそうとすると、アリエラが声をあげて判事の手をとめ、慰謝料がほしいといいだします。何しろ女ははだしで、ホグバック山の弟のところにいくにもいけない状況です。

 判事は、離婚証明には、五ドルの慰謝料が必要と裁定します。

 金がないため、翌日まで時間がほしいとランシー。

 判事が夕食の待つ家に向かう途中、強盗にあい五ドルを、強盗のいうように銃の先に突っ込みます。

 翌日、ランシーは五ドルを慰謝料として妻に手渡します。その紙幣は、まるで銃口につっこまれていたかのように巻き癖がついていました。

 目的は達成されたはずですが、ここで終わってはあまりにも平凡。

 ここからがオー・ヘンリーの世界で、売り言葉に買い言葉ではじまった離婚劇も、いったん成立して、別れ際にいろいろ話し合っているうち、互いに相手のことが心配になり、よりをもどします。
 長い人生には山あり谷あり。

 離婚が成立している以上、夫婦のようにふるまうことは許されないという判事に、もういちど結婚式をあげる手数料として五ドルを判事にだして、ふたりはかたく手を握り合い、牛車にのりこみ、山に向かって出発します。

 じつはこの判事、離婚手続料も慰謝料もランシーに決めさせて、自分では金額をいいだしません。「何食わぬ顔で紙幣をポケットにねじこみ」とあるので、自分のポケットに入れつもりだったのかも?

 二人が、よりをもどす心理描写が巧みです。

 この本は、図書館の児童書コーナーにありましたが、夫婦間の微妙な関係は、大人でないとわかりにくいストーリーでしょう。

 おたがいの欠点を口にしてしまえば、夫婦関係はうまくいきません。けれどもさんざん悪口をいっていまえばすっきりして、良い点もみえてくるのかも。