空にうかんだお城/フランス民話 山口智子・訳 岩波書店 1981年
二人か三人で語ったら楽しそうな類例のない話。
「とん、とん」
「だれだい?」
「わたしで!」
「で、どこからきたのかい?」
「パリのずうっとむこうの、タルタリ・バリバリからでさ。」
「で、くるみちで何をみた?」
「なにをみたかって? わたしゃ、ニレの木のてっぺんで小麦をひいている風車をみましたっけ。」
「なんだと!そんなことがあるものか。このうそつめをろうやにひいていけ!」
「とん、とん」
「だれだい?」
「わたしで!」
「で、どこからきたのかい?」
「パリのずうっとむこうの、タルタリ・バリバリからでさ。」
「で、くるみちで何をみた?」
「なにをみたかって? わたしゃ、そりゃあ大きなクロイヌがしっぽを粉だらけにして、ニレの木のてっぺんからかけおりてくるのをみましたっけ。」
「とすると、そのイヌはあの風車の粉をたべておりてきたんだ! さ、あのきのどくな人をろうやからだしておやり!」
とんでもないと、ろうやにいれられるが、あとから きた人の話で、ろうやから だされるという リズムのある繰り返しが みっつ続きます。
フェイクにフェイクでこたえると本当らしく聞こえるというのも、なにか現代的。