どんぴんからりん

昔話、絵本、創作(短編)などを紹介しています。

魔女がいなくなったわけは

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   めんどりがやいたパン/中央アジア・シベリアのむかしばなし集/小檜山 奮男・訳 宮澤ナツ・画/新読書社/2006年初版

 

 チュクチ(チュクチはユーラシア大陸の最東端)の昔話。

 

 遠いむかし、チュクチ半島のあたりにカトグィルグインという魔女が住んでいた。この魔女がすむ洞穴に、野宿をしようとはいりこんだのがトゥイネンという狩人。

 おかみさんといざこざがあって、いっしょに暮らせないと、家をでたのです。

 魔女は、「わしには、鳥だのけものだの、さまざまな木だの草だの、おおぜいの使い走りがおるのだが、人間は一人もいないのだ。どうだ、これからわしの使い走りになる気はないか。わしのいうとおりにはたらいたらどうだ」といいましたが、トゥイネンは、鉄砲を構え「いやだ、といったらどうする?」と、こたえました。
 ところが鉄砲は、魔女に、まがった木の枝にかえられていました。それでも、トゥイネンは、その木の枝をふりあげて、さっと打ち下ろしました。するとどうしたことか、雪まじりの風が吹きつけ、夜の闇につつまれました。雪の中にもぐって、吹雪がおさまるのをまちましたが、ますますはげしくなるばかり。待ちきれずに家に向かいますが、どうしても村へ戻る道が見つかりません。つかれはてて雪の上にぱたりとたおれ、ねむってしまいました。
 目をさますと、目の前には魔女のばあさま。トゥイネンは、もうにげられないとかくごをきめ、ばあさんのいうとおりにするが、まずは食べ物をさきにほしいと、いいました。ばあさまが髪の毛をゆさぶると、ありとあらゆる食べ物をつんだ、トナカイがあらわれました。ばあさは、胸につかえるほど食べたトゥイネンに、「ひとねむりするから、だれもいれるでないぞ」といいました。

 ばあさまがねむっているとき、魔女の一番弟子という白いクマがあらわれ、魔女にあわせろと、ききません。トゥイネンは、ばあさまからいわれたように、あわせようとせず、鉄砲に手をかけ、引き金に指をかけました。するとクマは、「ちょっと待て。打たないでくれ」といってから、「ウサギにでもなってしまえ」とほえると、トゥイネンは、ウサギにかわりました。

 家の戸をたたいて、あけてくれるよう おかみさんにたのみますが、ウサギをみたおかみさんから、「イヌにほえつかれないうちに、さっさと行っておしまい」とげらげら笑われてしまいます。

 長いこと走り、おなかがすいたウサギが、ヤーゲリというこけをみつけ、たべようとすると、ヤーゲリは、びっくりしてさけびました。「アザラシにでもなってしまえ」。するとウサギは、アザラシにかわりました。

 アザラシは、海でタラをみつけ食べようとすると、タラは、さけびました。「オオカミにでもなってしまえ」。

 トゥイネンは、ウミガラスからトナカイにかわり、シラカバが、「人間にでもなってしまえ」とさけんだので、また人間にもどりました。

 家のかえって、これまでに出会ったことをおかみさんに話すと、おかみさんはいつのまにか魔女のカトグィルグインにかわっていました。

 トゥイネンが、「おまえが魔女だなんて信じられない。魔女ならハエになれるはずだが。それができるか」というと、魔女は蚊になりました。トゥイネンは、腕を差し出し、血を吸うようにいい、蚊が腕にとまると、すかさずぱちんと、手でつぶしてしまいました。そのときから、チュコトには魔女がいなくなったという。

 

 最後は「三枚のお札」風の結末です。