奈良のむかし話/奈良のむかし話研究会/日本標準/1977年
こじきがふたりねころんで、ごろんと昼寝をしておった。
目をさましたひとりが、ねている男を見ていたら、ハチが一匹、耳の穴へ出たり入ったりしていた。
起きていた男が、寝ていた男をゆりおこすと、男は夢をみていたという。その夢というのは、「この山のふもとのへんに、たからの壺がうずめてあって、それを掘りおこそうとしたときに、おまえが起こして目が覚めた。」というもの。
そのあと、ふたりは別れたが、起きていたほうの男はもどってきて、もう一人が、昼寝したところをあっちこっちどんどんほると、やっぱり壺が出てきた。むねわくわくさせて、壺の蓋を取ってみると、小判がびっしり。こじきは、小判の詰まった壺を持って帰って、大金持ちになった。
夢というと、だいたいは、ここで終わる話がおおいが、後日譚がある。
大金持ちになった男のところに、昼寝していた男がやってきたので、金持ちこじきはわけを話した。その壺をふたりでよくよく調べてみたら、壺の裏に、「七つぼのうち」と書いてある。
「おい、こりゃ、壺が七つあって、これはそのうちの一つということやぞ」というわけで、ふたりが急いで昼寝の場所にいって、そこらじゅう、どんどんほりまくったら、「あっ.あった」「あっ、あった」というわけで、残りの壺が六つ出たり。どれにも小判がいっぱいやったと。
今でも、「ななつぼ」という地名のところ、あるやろな。
こんだけ、後味がいい話も珍しい。
おなじ出版社からでている富山の昔話に、同様の話がありました。