どんぴんからりん

昔話、絵本、創作(短編)などを紹介しています。

せかいで いちばん つよい国

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   せかいで いちばん つよい国/デビッド・マッキー・作 なかがわ ちひろ・訳/光村教育図書/2005年

 

 「むかし、大きな国がありました。」と昔話のはじまり。

 大きな国の人々は、自分たちの暮らしほど素敵なものはないと固く信じていました。そして、この国の兵隊は、たいへんつよく大砲も持っていました。

 「我々が世界中を征服すれば、みんなが我々と同じように暮らせるのだから」と、ほかの国を、つぎつぎに征服していきました。

 とうとう、征服されていない国はただ一つになりました。とても小さなその国だけれど、残しておくのも気持ちがわるいものです。

 小さな国に向かった大統領と兵隊たちは、小さい国についておどろきました。この国には軍隊がなかったのです。これでは戦争のしようがありません。

 小さな国の人びとは、大きな国の兵隊をお客のように歓迎し、大統領は、一番立派な家に住み、兵隊たちも、あちこちの家にとめてもらうことになりました。


 兵隊たちは、残してきたおくさんと息子に手紙をおくりました。小さな国の人びとおしゃべりし、めずらしい石けりをおしえてもらい、昔話に耳をかたむけました。小さな国の歌をならい、冗談を聞いて笑い転げました。兵隊たちが、小さい国の食べ物にもひかれていきました。そして、することがないので、小さな国の人びとの 仕事を手伝うようになりました。

 大統領は、すっかりたるんだ兵隊を、おくりかえし、しゃっきとした兵隊たちをよびましたが、この兵隊たちもまったく同じようになりました。

 おおぜいの兵隊をおいてもしかたないので、大統領は、何人かの見張りを残して、国へ帰ることにしました。

 「世界をすくう 正義の味方! 大きな国はつよい国!」の歌をうたいながら、国へ帰ってきた大統領でしたが、おちついてみると なにか変です。

 

 大きな国の、食べ物や服、遊びが、小さな国の生活習慣そのものになっていたのです。さらに息子から歌をうたってくれるよういわれると、大統領の口からでたのは、彼が征服した小さい国の歌でした。

 大統領は、「どれも、戦争で分捕ってきたものだからな」と、うそぶくのでしたが・・。

 

 「つよい」とは、武力か文化か?。

 

 文にはでてきませんが、戦争を熱狂的に支持する高層ビルの人びとが漫画のようにえがかれています。戦争中、戦果を熱狂的に歓迎した人々の姿と重なり、複雑でした。