
にんじんケーキ/ノニー・ホグロギアン 乾侑美子・訳/評論社/1979年2009改訂
これほど似合いのカップルは、夫婦は国中を探してもみつからないだろうという うさぎの夫婦。
ハネムーンからかえったふたりは、あたらしい生活をはじめました。料理をし、家を住みよくすること。そして、おたがいのことを もっと しりあわなければいけません。
夕方、散歩の時間、だんなさんが「なんのはなしをしようか」ときくと、おくさんは、「さあ、わたし、おもいつかないわ」
だんなさんは、町へいったときのことを、話しはじめました。
だんなさん「ぼくは、まずうちのドアをなおしにもらいに、大工のところへいった」
おくさん「あら、そう」
だんなさん「それから、このチョッキを買った」
おくさん「あら、そう」
だんなさん「あら、そう、しかいえないのかい」
おくさん「なんていったらいいのかしら」
だんなさん「いいチョッキだわ。ぼろぼろになるまで それを着て、気持ちよくすごしてくださいな、とでもいいたまえ」
おくさんは小さな声でいいました。「じゃあ、いうわ。ぼろぼろになるまで それを着て、気持ちよくすごしてくださいな。」
だんなさん「それからぼくは、冬にそなえて、たきぎをあつめた」
おくさんは、よろこんでもらおうと、「ぼろぼろになるまで それを着て、気持ちよくすごしてくださいな。」
だんなさん「ちがうちがう。ぼくは、たきぎのはなしを してるんだ。冬になったら、それをもやしまそう、あたたかいでしょうね、とでもいいたまえ」
こんなやりとりが、いくつも続きます。
おくさんんは、こんなことはもうたくさんと、だんなさんをたたきました。
びっくりした、だんなさんが、「おい、きみ、なにをするんだい」というと、おくさんは、「ああいえ、こういえって、お説教ばかり。わたしだって、あなたがおもっているほど ばかじゃないのに」と、また だんなさんをたたきました。
「あれ、あれ」とだけいったのは、こんどはだんなさん。
だんなさん「どういえばいいんだい」
おくさん「今日一日、わたしがなにをしていたか、きいてちょうだい。わたしがうちきでも、ばかなことをしても、がまんしてほしいのよ」
だんなさん「ぼくは、しゃべるのにいそがしくて、きみことをかんがえなかったんだ」
おくさん「ときには、だまっているのもいいものよ」
だんなさんは、おくさんにキスをし、おくさんは、だんなさんに だきつきました。
ふたりは、新鮮な気持ちで、うさぎあなにかえって、にんじんケーキをたべました。なにもはなさず。
これって、突っ込みどころがいっぱい。
結婚前に、どんなつきあいをしたの?
いくらなんでも、ここまで、とんちんかんな おくさんは いるの?
内気であっても、なにもいえなくて、キレてしまうのも どうなの?
黙っているのも会話の一つ?
この夫婦は、ながつづきしたの?
タイトル「にんじんケーキ」からは、とても連想できませんでした。
新婚のうち、たがいのことを理解できたのが、これからの糧になることを祈るだけ。
